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2016/09/16

定款を活用した事業承継対策

 国家に憲法や法律が存在するのと同様に、会社にも定款というものが存在し、これは会社の最高法規を定めたルールといえます。

 会社は事業を遂行するにあたって、この定款に書いてあることに反する行為をすることはできず、経営者はこのルールの縛りを受けながら、事業を運営していかなければいけません。場合によっては、経営者の行為が、定款違反としてその責任を問われることもあり得ます。

 ただ、定款上のルールが経営者にとって有利に働くこともあり、その内容によっては今後の会社運営がしやすくなるともいえます。 事業承継対策を考えるにあたって非常に重要なことの一つとして、先述したように株式の分散をいかに防ぐかが挙げられます。そのため、定款を駆使して、株式の分散を防ぐ対策をとる必要性が出てくるのです。 

(1)株式譲渡制限の設置

 一般に大企業と呼ばれる会社、すなわち、東証一部上場や二部上場等の会社の株式を持っている個人株主などは、株価の値動きに応じて、株を売ったり、買ったりと自由に取引を行うのが通常です。このような会社では、個人株主などは、そこの会社の株主総会に出席をし、議決権を行使して、会社を運営することに関心を持っているケースは稀であり、その多くは、株の売買に伴う儲けや、配当金などを目当てとして、株主となるケースが大半ではないでしょうか。株式を保有する意味として、前者のように株主総会などで議決権を行使して会社運営に携わるような株主の権利を、「共益権」といい、後者のように金銭的な利益に繋がるような株主の権利を、「自益権」といいます。

 これに対して、世の中の中小・零細企業の多くは、株式の取引を自由に行うことができないように制限しているケースが圧倒的です。

 規模の小さな会社にとって、会社に望ましくない第三者が株式を保有することは大変危険だからです。このような会社で株主になる大きな動機づけとしては、「自益権」の行使のためではなく、そのほとんどが「共益権」の行使をもくろみ株式を得て、会社経営に関与しようとすることが大半であると考えられるからです。

 そのため、会社にとって望ましくない者が株主になることを防ぐために、定款で、株式譲渡制限の設定をしておくことが重要となります。このような会社の場合、株主が他人に株式を譲渡する場合、予め定められた承認機関(例えば株主総会や代表取締役等)の承諾が必要です。定款によって株式譲渡の承認をする機関を、経営者や後継者にとって有利となるような規定にすることで、株主の移動に目を光らせることが可能となります。 

(2)譲渡制限株式の相続人に対する売渡請求

 株式の譲渡制限の設定をした会社の株主が死亡し、相続が発生した場合、会社はその相続人への株式の移転を拒むことができるでしょうか。

 答えは、「NO」です。

 株式の譲渡について制限のある会社の株主が生前に第三者に対して売買や贈与などの行為により株式を譲渡する場合は、この定款規定によって、会社の承認が必要となりますが、相続の場合にはこれに該当しないのです。そのため相続人がどのような人物かによって、会社の運営が大きく左右される事態も考えられます。

 その不安を解消する対策として、定款で、相続によって株式を取得した者に対して会社がその株式を取得することができるという規定を設けることで、相続人に対して自社株式の売渡請求を行うことが可能となります。この売渡請求権を行使し株式を買取ることにより、会社にとって好ましくない者が会社の支配権を行使することを防止することができます。さらには株式の分散を防ぎ、経営者・後継者への株式の集中へと繋げることもできるのです。

(3)種類株式の設定

 株式を有する株主の権利は、その持株数に応じて、平等に取り扱うことが原則です。例えば、同じ50株を有する株主Aと株主Bに対して、会社は株主総会での議決権に差をつけるようなことはできず、また、配当金の分配についても、片方のみに有利な分配案を決定することはできません。

 しかしながら、株主も三者三様です。例えば、会社運営には全く関心がなく、株主総会に出席をして議決権の行使を行うことなど全く考えておらず、ただ単に配当金のみ得られれば良いという株主もいるでしょう。あるいは、議案の内容によって議決権の行使を行うかどうかを判断したい株主がいてもおかしくありません。

 ですから、株主の権利内容がみな同じでは各株主の要望に応えることができないともいえるのです。 
 そこで、法律で権利の内容が異なる株式の発行を認めることになりました。株式の内容によって、権利の行使内容に違いのある株式のことを、種類株式とよびます。議決権や財産権など、普通の株式と異なる内容の種類株式を発行しておくことで、会社は議決権をコントロールすることが可能となります。